遺言や贈与契約などの手続きを調べていると、「公証役場」という言葉を目にすることが増えてきます。しかし、「公証役場ってどこにあるの?」「何をしてくれるところ?」「役所とは違うの?」と感じる方も多いのではないでしょうか。
この記事では、公証役場の役割や基本的な仕組み、公正証書作成などの場面でどのように利用されているのかを、初めての方にもわかりやすく解説します。
公証役場とは?
公証役場とは、公証人が常駐し、文書の作成や認証などの業務を行う公的機関です。ただし、一般的な「役所」とは異なり、法務省の管轄でありながら、独立した機関として全国に設置されています。
役所のように住民票を取得したり税金を納めたりする場所ではなく、あくまで公証人の職務を行うための専門機関です。主に民間の契約や遺言などに関する公正証書の作成や、私文書への認証・確定日付の付与といった業務を担っています。

たとえば、自筆の遺言書では不安があるという方が、公証役場で公正証書遺言を作成すれば、形式的なミスや紛失、改ざんのリスクを大幅に減らすことができます。
どの公証役場でも基本的に同様の手続きを受けられますが、「特定の公証人にお願いしたい」という希望がある場合には、予約の際にその旨を伝えることで、調整が可能なこともあります。
公証役場でできること
公証役場では、以下のような手続きが行われています。
- 公正証書の作成:遺言書、贈与契約書、金銭貸借契約書など。たとえば、高齢の親が「この土地を長男に贈与したい」と考えたとき、その意思を法的に有効な形で文書に残すために利用されます。
- 私署証書の認証:署名・押印が本人によるものであることを証明。企業間契約や、離婚に伴う取り決めなどで多く利用されます。
- 確定日付の付与:文書が特定の日に存在していたことの証明。たとえば、契約書に第三者の確証が必要な場合などに利用されます。
これらの手続きは、将来的な紛争や不安を避けるための「備え」として非常に有効です。

公証役場の利用の流れ
公証役場を利用する場合、次のような流れで進められます。
- 事前相談・予約:まずは公証役場に連絡し、どのような手続きを行いたいかを伝えます。たとえば「遺言を作りたい」「借用書を法的に強くしたい」といった相談からスタートします。
- 書類準備と打ち合わせ:必要な資料(戸籍謄本、登記事項証明書、契約書案など)を用意し、公証人と内容のすり合わせを行います。
- 当日の面談と確認:本人確認のための面談が行われ、公証人が内容を読み上げたり、意思の有無を確認します。問題がなければ正式に公正証書として完成します。
- 公正証書の交付と保管:作成された原本は公証役場で厳重に保管され、依頼者には「正本」または「謄本」が渡されます。
この流れに沿って手続きすることで、公的な証拠力のある文書が残せることになります。
公証役場の場所とアクセス

公証役場は全国に約300か所あり、都道府県ごとに主要都市を中心に配置されています。最寄りの役場を探すには、「日本公証人連合会」の公式サイトで検索するのが便利です。また、外出が難しい高齢者や入院中の方のために、一定の条件を満たせば出張による公証手続きも可能です。たとえば、病院の一室で遺言作成を行ったり、施設内での贈与契約を証明するといった対応も行われています。
公証役場の利用時に注意したいこと
費用が発生する
公正証書の作成には、公証人手数料令に基づいた費用がかかります。
- 遺言書作成:約1万1,000円~(遺産総額に応じて加算)
- 金銭契約:契約金額に応じて5,000円~5万円程度
- 確定日付の付与:1通につき700円
あくまで目安であり、正確な金額は手続き内容に応じて変動します。事前に見積もりを依頼すると安心です。
証人が必要な場合がある
特に遺言書を公正証書で作成する際には、2名以上の証人が必要です。家族や関係者以外が望ましく、公証役場で有料で手配してもらうこともできます(1名あたり5,000円〜1万円程度が相場です)。
本人確認書類の準備
手続き時には、運転免許証やマイナンバーカード、パスポートなどの顔写真付きの本人確認書類が必要になります。事前に有効期限や記載事項を確認しておきましょう。
最後に
公証役場は、将来のトラブルを未然に防ぎたいと考える方にとって、非常に頼りになる存在です。契約や遺言、贈与など、個人間の意思を「法的な証拠」として残すことができる場所であり、その重要性は年々増しています。
内容や状況に応じて、行政書士が文案の作成を支援したり、司法書士が不動産の登記手続きをサポートしたりする場面もあります。専門家と連携しながら公証役場を上手に活用することで、大切な財産や思いをしっかりと形にして残すことができます。