遺言や贈与、契約書の作成に関する情報を調べていると、「公証人」や「公正証書」という言葉を目にする機会が増えてきます。しかし、「公証人って何をする人?」「弁護士や司法書士とどう違うの?」と感じる方も多いのではないでしょうか。
この記事では、公証人の役割や仕事の内容、遺言や贈与の場面でどのように関わるのかをわかりやすく解説します。法律の専門職の一つである公証人について正しく理解することで、より納得感をもって相続や贈与の準備を進めることができます。
公証人とは?

公証人とは、法務大臣から任命され、公正証書の作成や文書の認証などを行う法律専門職です。民間人でありながら、準公務員的な立場で職務を遂行します。主に、元裁判官や元検察官、経験豊富な弁護士などから選ばれます。
たとえば、個人間でお金の貸し借りをした際に、「借用書を書いたけど、本当に効力があるのか不安」といった場面があります。こうしたときに、公証人が介在し、公正証書として文書を作成することで、その文書が裁判でも有効な証拠として使えるようになります。
公証人の主な仕事とできること
公証人の代表的な業務には以下のようなものがあります。
- 公正証書の作成:遺言書、公正証書遺言、金銭消費貸借契約(借用書)、離婚に伴う養育費の取り決めなど。
- 私署証書の認証:本人が作成した契約書などについて、本人の署名と押印が真正であることを認証する手続き。
- 確定日付の付与:ある文書がその日に確かに存在していたという証明を与える手続き。
たとえば、養育費の取り決めについて公正証書を作成した場合、将来の支払いが滞った際には裁判所の手続きを経ることなく強制執行が可能になります。これにより、当事者の負担やトラブルのリスクを大幅に減らすことができます。
遺言や贈与での公証人の関わり
公正証書遺言の作成
公正証書遺言は、公証人が本人の口述をもとに内容を記録し、公証役場で原本を保管する形式の遺言です。手元にある遺言書と違い、紛失や改ざん、形式不備による無効の心配がありません。
たとえば、財産の分け方に不満を持った相続人がいたとしても、「形式的に問題のない公正証書遺言がある」ことで、相続人間の無用な争いを防ぐことができます。

贈与契約の明確化
贈与は、当事者の合意によって成立しますが、後から「そんな約束はしていない」といった主張がされるケースも少なくありません。たとえば、高齢の親が「生前にあげる」と言っていた土地を、他の家族が「そんな話は聞いていない」と主張してトラブルになるケースです。
こうしたトラブルを防ぐ手段として、公証人によって作成された公正証書を利用する方法があります。贈与の意思が明確に記録され、日付や内容、署名が法的に認証されていれば、後日の争いを防ぐ有効な証拠となります。

公証人と他の専門職との違い
公証人は、文書の形式的な有効性や証明力を担保する役割を果たします。一方で、行政書士は文書の内容を構成・作成し、司法書士は登記その他法務手続きを担当します。
たとえば、公正証書遺言を作成する場合、遺言の内容や構成については行政書士が相談に応じ、必要書類を整え、公証人はその内容をもとに正式な文書を作成します。不動産の贈与が関係する場合には、司法書士が名義変更の登記を行うことになります。このように、それぞれの専門家が役割を分担しながら協力して手続きを進めることが一般的です。
最後に
公証人は、契約や遺言など個人間で交わされる大切な約束に、公的な証明力を与える法律専門職です。特に相続や贈与といった将来の紛争リスクが高い手続きにおいて、その役割は大きなものとなります。公証人はあくまで中立な立場で文書の形式や意思確認を行う存在であり、書類の構成や実務支援は行政書士や司法書士といった他の専門職と連携して進めることも少なくありません。
目的に応じて、どのような手続きでどの専門家が関与するのかを理解しておくことで、より安心して大切な財産に関する意思表示を形にしていくことができるでしょう。