秘密証書遺言とは?内容を知られずに遺言を残す選択肢

秘密証書遺言とは?内容を知られずに遺言を残す選択肢

遺言の方式にはいくつか種類がありますが、その中でも「内容を誰にも知られたくない」「手書きではなくパソコンで作成したい」といったニーズに応えるのが秘密証書遺言です。

この記事では、秘密証書遺言の特徴や作成手順、メリットとデメリット、注意点などについて詳しく解説します。

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秘密証書遺言とは?

秘密証書遺言は、遺言者が自分で遺言書を作成し(手書き・パソコンいずれも可)、その内容を誰にも見せずに封をした状態で、公証人と証人2名の前で「これは遺言書です」と申述して確認してもらう方式です。公証人は封筒の中身を確認せず、封印されたままの状態で「これは遺言である」と証明します。

封筒の表面には、公証人と証人によって確認が行われたことを示す文言が記載されますが、遺言の中身は誰にも知られません。

また、秘密証書遺言は作成後に本人の手元で保管されるのが一般的です。公証役場では内容を確認せず、封書の存在と作成手続きが行われた事実を記録するだけです。そのため、遺言者が亡くなったあとに、封書が発見されなければ、遺言が執行されないリスクもあります。

作成後の封印について

秘密証書遺言は封印された状態で効力を持ちますが、遺言者が亡くなる前に誤って封筒を開けてしまった場合でも、内容に変更が加えられていなければ効力が失われるわけではありません。ただし、開封されたことによって内容が書き換えられた可能性があると疑われると、無効と判断される可能性もあります。

そのため、封筒の保管には細心の注意が必要です。自宅での保管に不安がある場合は、金庫など安全な場所を利用するか、信頼できる家族や専門家に保管を依頼するのが現実的な対応です。

秘密証書遺言の作成方法と流れ

秘密証書遺言を作成する際の大まかな流れは次のとおりです。

  1. 自分で遺言書を作成する(パソコンでも可。ただし自署による署名と押印は必要)
  2. 遺言書を封筒に入れて封をし封印を施す(遺言書の押印と封印の印影は同一のものでないと無効)
  3. 公証役場へ行き、公証人と証人2名の前で「これは私の遺言書です」と述べて封印されたまま提出する
  4. 公証人が、封筒に「これは遺言書である」との証明文を記載
  5. 公証人・証人・本人がそれぞれ署名・押印

証人2名は公正証書遺言の場合と同様、推定相続人やその配偶者・直系血族などはなれません。事前に信頼できる証人を確保しておくことが重要です。

秘密証書遺言のメリットとデメリット

秘密証書遺言のメリット

  • 内容を完全に秘密にできる(証人や公証人も内容を知らない)
  • パソコンやワープロで作成可能(自署は必要)
  • 公証人が関与することで形式面の証明がなされる

秘密証書遺言のデメリット

  • 遺言の内容に不備があると無効になる可能性がある(公証人は中身を確認しない)
  • 紛失や未発見、改ざんのリスクがある
  • 遺言者が亡くなった後、家庭裁判所での検認が必要

向いているケースと注意点

秘密証書遺言は、次のような方に向いています。

  • 自分の遺言内容を誰にも知られたくない
  • 手書きよりもパソコンやワープロで作成したい
  • 遺言書を自分で保管しておきたい

一方で、内容の法的有効性や確実な発見・実行を重視する場合は、公正証書遺言の方が適しているケースもあります。

また、前述のとおり、封書が開封されてしまった場合に内容の改ざんが疑われると、遺言の有効性が問題となることもあります。信頼できる保管方法を検討しましょう。

専門家によるサポートの活用

秘密証書遺言は自由度が高い分、法律的なミスや形式不備によって無効になるリスクも伴います。こうしたリスクを回避するためには、行政書士による文案チェックや文面のアドバイスが有効です。また、封印後の保管について不安がある場合、信頼できる専門家に保管を依頼するという選択肢もあります。不動産などが含まれている場合は、将来の登記手続きに向けて司法書士の視点での確認も役立ちます。

最後に

秘密証書遺言は、「内容を誰にも見せずに残したい」という想いを実現できる選択肢の一つです。ただし、その自由さの裏には、内容の不備や紛失、発見されないリスクもあるため、制度を正しく理解し、確実に実現する工夫が必要です。

専門家の助言を受けながら、他の方式との違いも比較した上で、自分に合った遺言の形を選んでいきましょう。