公正証書遺言とは?確実性と安心感を重視するならこの方式

公正証書遺言とは?確実性と安心感を重視するならこの方式

遺言にはいくつかの方式がありますが、「法的に間違いがないようにしたい」「確実に遺言の内容を実現したい」という方にとって最も信頼性が高いのが公正証書遺言です。自分で書く必要がなく、公証人という法律の専門家が作成に関わることで、有効性が高く、トラブル回避の効果も大きいのが特徴です。

この記事では、公正証書遺言の基本から手続きの流れ、費用の目安、活用するメリット、注意点までを解説します。

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公正証書遺言とは?

公正証書遺言とは、公証役場において公証人が作成する遺言のことです。遺言者が遺言の内容を口頭で伝え、公証人がそれを文書にまとめて作成します。証人2名の立ち会いが必要で、完成した遺言書は公証役場でも保管されます。

本人が手書きする必要がないため、書き間違いや法律的な不備が起きにくく、相続開始後も家庭裁判所での「検認」が不要なため、速やかに遺言内容が実行に移されます。

公正証書遺言の作成方法と流れ

公正証書遺言を作成するには、まずは公証役場へ事前に連絡を取り、相談と予約を行います。その際、以下の書類の準備が必要です(ただし、以下は概括的な記載に留まりますので、詳細は実際に依頼する公証役場に確認することをお勧めします)。

  • 本人確認書類(運転免許証やマイナンバーカードなど)
  • 財産の内容を証明する資料(登記事項証明書、通帳のコピーなど)
  • 相続人関係がわかる戸籍謄本
  • 遺言の内容をまとめたメモ

その後、遺言の趣旨を口頭で伝え、公証人が法律に適した文言に整えます。証人2名の立会いのもと、最終的に公証人が内容を読み上げ、問題がなければ署名・押印して完成します。

なお、証人は20歳以上であれば誰でもなれますが、推定相続人やその配偶者、直系血族はなれません。証人の手配が難しい場合は、公証役場で紹介してもらえることもあります。

公正証書遺言の費用と所要時間

公正証書遺言の費用は、遺言に記載する財産の総額によって異なり、以下のとおりです(公証人手数料令第9条別表)。

目的の価額手数料
100万円以下5,000円
100万円を超え200万円以下7,000円
200万円を超え500万円以下11,000円
500万円を超え1,000万円以下17,000円
1000万円を超え3,000万円以下23,000円
3,000万円を超え5,000万円以下29,000円
5,000万円を超え1億円以下43,000円
1億円を超え3億円以下43,000円に超過額5,000万円までごとに13,000円を加算した額
3億円を超え10億円以下95,000円に超過額5,000万円までごとに11,000円を加算した額
10億円を超える場合249,000円に超過額5,000万円までごとに8,000円を加算した額

段階的に手数料が加算されていきますが、「目的の価額」は遺産総額ではなく、遺産を受け取る(予定の)各相続人ごとに個別に算定し、その総額に遺言加算がなされる場合がありますので、具体的な費用は事前に公証役場へ確認しましょう。これに加えて、証人を外部に依頼した場合の謝礼(1人あたり5,000円〜1万円程度)や、専門家への文案作成サポート費用が発生する場合もあります。

打ち合わせから完成までの期間は、おおむね1〜2週間が目安です。

公正証書遺言のメリット

公正証書遺言の最大の利点は「安心して遺言を残せること」です。具体的には、

  • 法的に無効になるリスクが極めて低い:公証人が法律の専門家として文面をチェックしてくれるため、不備がほとんど起こりません。
  • 遺言の実現性が高い:家庭裁判所の検認が不要で、手続きがスムーズです。
  • 紛失や改ざんの心配がない:遺言書は公証役場で保管されるため、確実に見つかり、第三者に改ざんされるリスクもありません。
  • 病気や高齢でも対応可能:自署が難しい場合でも、公証人が内容を確認し、本人の意思を確認できれば作成が可能です。

公正証書遺言を活用すべきケース

次のようなケースでは、公正証書遺言の活用が特におすすめです。

  • 家族構成が複雑で、相続トラブルの予防を重視したいとき
  • 相続財産に不動産や会社の株式など、分けにくい資産が含まれているとき
  • 遺言の存在を確実に相続人に伝えたいとき
  • 自筆で遺言を書く自信がないとき

専門家によるサポートの活用

公正証書遺言は公証人が作成に関与しますが、遺言内容の事前整理や文案の準備段階で行政書士のサポートを受けると、さらにスムーズです。財産の一覧作成や相続関係の整理など、専門家の視点で漏れのない準備が可能になります。

また、遺言で不動産の指定がある場合には、司法書士が登記の実務を見据えた助言を行い、将来の名義変更手続きまで見越した遺言の設計が可能になります。

最後に

公正証書遺言は、費用はかかるものの、その分「確実に意思を残せる」「トラブルを防げる」という大きな安心感があります。自筆での作成に不安がある方や、将来の相続にしっかり備えたいと考える方にとって、最適な選択肢となるでしょう。

迷いや不安がある場合は、行政書士や司法書士といった専門家に相談しながら、自分に合った形の遺言作成を進めてみてください。