自筆証書遺言とは?手軽に始められる遺言の第一歩

自筆証書遺言とは?手軽に始められる遺言の第一歩

遺言を書いておきたいけれど、「まずは手軽に始めたい」「費用をかけずに自分で準備したい」と考える方も多いのではないでしょうか。そんなとき、最も身近な選択肢となるのが「自筆証書遺言」です。

この記事では、自筆証書遺言の基本からメリット・注意点、保管制度の活用方法までをわかりやすく解説します。

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自筆証書遺言とは?

自筆証書遺言とは、遺言者本人が「全文・作成日付・氏名」をすべて手書きし、押印することで成立する遺言の形式です。民法に定められている「普通方式遺言」のひとつで、特別な手続きや費用をかけず、自宅などで自分の意思だけで作成できます。

たとえば、「自宅の土地を長男に相続させたい」「預貯金は妻に渡したい」といった希望を、紙に自分の手で書くことで、その意思を形にできます。具体的には、便箋に「令和6年4月1日 私は、〇〇市〇〇町〇丁目〇番地の土地を長男〇〇に相続させる。××銀行△支店の預貯金は妻〇〇に相続させる。〇〇〇〇(氏名) 印」と書き、認印または実印を押せば、自筆証書遺言としての形式を満たします。

メリットと注意点

自筆証書遺言メリット

  • 費用がかからない:紙とペンさえあれば作成可能で、公証役場や専門家への依頼費用も不要です。
  • 思い立ったときにすぐ書ける:自宅でも病室でも、自分の判断で自由に書けます。
  • 内容の自由度が高い:形式に縛られず、自分の言葉で財産の分け方や家族への想いを綴ることができます。

たとえば、「次女が長年同居して面倒を見てくれたので、長女より多めに財産を渡したい」といった個人的な理由も自由に書き添えることができます。

自筆証書遺言注意点

ただし、手軽である反面、注意すべきポイントもあります。

  • 方式の不備で無効になる:たとえば、日付が「令和6年4月吉日」など曖昧だったり、氏名や押印が抜けていたりすると、無効になります。
  • 見つからない・改ざんされるおそれ:自宅に保管していたが、家族に見つけてもらえなかったり、誰かに書き換えられてしまう(余白に思わぬ内容を加筆される等)リスクも考えられます。
  • 家庭裁判所での検認が必要:遺言者が亡くなったあと、相続人がその遺言を使って手続きを進めるには、家庭裁判所で「検認」という確認手続きが必要です。

つまり、せっかく遺言の内容により本人の意思が明らかとなっているにも関わらず書き方が正しくないから無効となり、結果として法定相続で分けることになったといった事態や、遺言書が発見されないことで相続人同士のトラブルに発展する事態も起こり得ます。

自筆証書遺言の保管制度

令和2年からは、法務局で自筆証書遺言を預かってくれる「自筆証書遺言書保管制度」がスタートしました。法務局に提出すると、以下のようなメリットがあります。

  • 検認手続きが不要になる:法務局に保管された遺言書は、家庭裁判所の検認が不要です。相続手続きがスムーズになります。
  • 改ざん・紛失を防げる:遺言書がそのまま公的に保管されるため、「見つからない」「誰かに破棄された」という心配がありません。
  • 家族に知らせる制度もある:相続人が遺言書の有無を確認し、あるいは相続人が保管の事実の通知を受けることができる制度もあるため、遺言書の存在を知らせることができます。

具体的には、法務局に予約をして出向き、本人確認書類とともに自筆証書遺言を提出することで手続きが完了します。保管手数料は遺言書1通あたり3,900円です。

専門家に相談するメリット

自筆証書遺言は自分で書ける遺言ですが、内容に不備があると無効になったり、相続トラブルにつながる可能性もあります。たとえば「財産の記載が不明確」「相続人の名前に誤字がある」など、思わぬところで問題が生じることがあります。

こうした不安を防ぐために、行政書士が文面のチェックや作成サポートを行い、法律的に有効な形式となるようアドバイスを提供することが可能です。また、不動産が含まれている場合には、司法書士が登記など相続実務に関する視点からアドバイスを行い、将来の手続きが円滑に進むよう支援します。

最後に

自筆証書遺言は、費用や手間をかけずに始められる「遺言の第一歩」です。家族に思いを残したい、「最後のメッセージ」を明確にしておきたいという気持ちをすぐに形にできるのが大きな魅力です。

ただし、せっかくの遺言も、形式の不備や管理の不十分さによって実現されないリスクもあります。大切な思いを確実に残すために、不安な点があれば行政書士や司法書士といった専門家のサポートを受けながら進めることをおすすめします。