【遺言執行者とは?】誰を選ぶべき?家族か専門家かで迷ったときの判断法

【遺言執行者とは?】誰を選ぶべき?家族か専門家かで迷ったときの判断法

遺言書を作成する際に重要なポイントの一つが「遺言執行者の選任」です。誰を遺言執行者にするかによって、相続手続きのスムーズさやトラブルのリスクが大きく変わります。

この記事では、

  • 遺言執行者とは何か(役割・重要性)
  • 遺言執行者を家族にする場合のメリット・デメリット
  • 遺言執行者を専門家に依頼する場合のメリット・デメリット
  • 迷ったときの遺言執行者の選び方・判断基準 をわかりやすく解説します。
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遺言執行者とは?どんな役割を果たす人?

遺言執行者とは、遺言書に記載された内容を確実に実行する責任を持つ人物です(民法第1006条、第1012条)。遺産相続において中心的な役割を担い、相続手続きの推進力となる存在です。

遺言執行者の主な業務

  • 財産の名義変更(不動産、預貯金、株式など)
  • 遺産分割の実施、手続き代理
  • 債務整理や税務申告に必要な手続きサポート
  • 相続財産の管理・精算
  • 遺言内容に基づく配分指示の遂行

遺言執行者が確実に指定されていると、相続人間の混乱や紛争リスクを未然に防ぎ、迅速な手続き完了につながります。相続の円滑な実現には、信頼できる遺言執行者の存在が不可欠です。

家族を遺言執行者に選ぶメリット・デメリット

家族を遺言執行者に指定するケースは多くありますが、メリットとリスクを正しく理解しておくことが大切です。

家族を選ぶメリット

  • 長年の信頼関係があり、相続人との意思疎通がスムーズ
  • 執行報酬が不要または安価に抑えられることが多い
  • 本人の意向をよく理解しており、柔軟に対応してもらいやすい

家族を選ぶデメリット

  • 相続人間で利害対立が発生すると公平性に疑念が生じる
  • 専門的な法律知識がない場合は、手続きミスや遅延リスクがある
  • 執行者自身が高齢または病気の場合、作業遂行が困難になりやすい
  • 感情的なしがらみで客観的な判断が難しくなることも

「家族だから任せて安心」と思っても、手続きの煩雑さや精神的負担が大きく、結果的に相続トラブルを招くリスクがあることも踏まえて判断しましょう。

専門家を遺言執行者に依頼するメリット・デメリット

弁護士、司法書士、行政書士といった法律・登記手続きの専門家に遺言執行を依頼する方法もあります。財産が多い場合や相続人が多数いる場合に特に有効です。

専門家を選ぶメリット

  • 法律や税務手続きに精通しており、スピーディーかつ正確に進められる
  • 相続人間の利害調整を中立的に行えるため、感情対立を回避できる
  • 必要な登記申請や税務申告などもワンストップ対応できるケースが多い
  • 手続き遅延や無効リスクが極めて低い

専門家を選ぶデメリット

  • 執行報酬(相続財産の1~3%程度)が発生するため、コスト負担が生じる
  • 家族に比べて故人の細かな意向を汲み取りにくい場合がある

相続の規模や複雑さ、相続人間の関係性を総合的に判断し、専門家執行者の選任を検討するのが賢明なケースも増えています。

遺言執行者の選び方|後悔しないための判断基準

遺言執行者を選ぶ際には、単なる信頼感だけでなく、実務遂行力や公平性まで考慮することが重要です。

遺言執行者選定チェックリスト

  • 相続人間に対立や感情的なわだかまりがあるか?
  • 財産の種類(不動産・株式・海外資産など)は複雑か?
  • 遺言執行者候補者の年齢・健康状態・事務処理能力に問題はないか?
  • 利害関係のない第三者の立場を維持できるか?

ケース別おすすめ判断

  • 【財産が少額かつ家族円満】→ 家族を遺言執行者にする選択も可
  • 【財産が多額・共有資産がある・相続人が多い】→ 専門家を遺言執行者に選任

特に、不動産や株式、事業承継資産が絡む場合には、専門知識を持つ専門家への依頼が強く推奨されます。遺言執行者の選定は、相続手続きの成否を左右する重要なポイントです。家族の未来のためにも慎重な検討をおすすめします。

よくある質問(FAQ)

Q1. 遺言執行者に指名されたら、断ることはできないのか?

できます。遺言執行者に指名された人は、その就任を承諾する前では自由に辞退することが可能です。しかし、一度就任を承諾した後は、辞任する際には家庭裁判所への辞任申立てが必要となり、その際には正当な事由の有無が問題になります。また、遺言執行者としての任務を一方的に放置した場合は損害賠償責任を問われることもあるため、遺言執行者への就任の際には慎重な検討が必要です。

Q2. 遺言執行者は複数人選任してもいいですか?

可能です。共同で遺言執行者を選任することも認められています。ただし、役割分担や意思統一が難しくなる場合があるため、慎重な検討が必要です。

Q3. 専門家に遺言執行を依頼すると費用はどれくらいかかりますか?

財産規模や手続きの難易度によりますが、一般的には相続財産の1〜3%程度が報酬相場とされています。事前に見積もりを取ることをおすすめします。また、遺言作成時に遺言執行者に対する報酬を定め、その額あるいは算定方法を遺言内容に加えることも可能です。遺言書に遺言執行者に対する報酬の定めがある場合は、それに従うこととなります。

Q4. 遺言執行者がいない場合はどうなる?

遺言に執行者の指定がない場合、相続人が協議して手続きを進めるか、必要に応じて家庭裁判所に選任を申し立てることになります。ただし、相続人間の調整が難航するリスクがあるため、遺言作成段階での指定が望ましいです。

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本庄 大太郎(ほんじょう ひろたろう)

本庄 大太郎(ほんじょう ひろたろう)

司法書士・行政書士

京都府出身、両親と弟の4人家族で育つ。趣味は、旅行、お酒、韓流ドラマ、飛行機etc。野菜が好きで、ランチはサラダバーを求めて行脚することも。思い立つとふらっと一人旅、週末に友人とわいわい飲みが日常の癒し。