私たちの暮らしの中には、法律に関わるさまざまな手続きがあります。たとえば、不動産を購入したり、会社を設立したり、借金の整理をするときには、正式な手続きが必要です。しかし、手続きを自分で行うのは難しく、専門的な知識が求められることが多くあります。そんなときに頼りになるのが 司法書士 です。司法書士は国家資格を持つ法律の専門家で、法務局や裁判所への申請手続き、不動産の登記、会社の登記、借金整理、裁判所提出書類の作成などをサポートします。この記事では、司法書士の具体的な仕事について、10の業務を例に挙げて分かりやすく紹介します。

読者の皆さま、はじめまして。司法書士・行政書士の本庄と申します。本稿では、私が主宰する「ひろい事務所」で受託できる業務のうち主に司法書士業の範囲におけることを紹介致します。
以下ご一読頂きたいと思うのですが、実際の依頼は、複数のジャンルに渡る複雑なものも少なくありません。例えば、ご両親の逝去に伴い住まう人の居なくなった不動産の売却という事例では、相続の手続きを経て買主様への名義変更(売買による所有権移転登記)という流れになりますし、認知症を患った親御さんの介護費用捻出のために元々ご実家であった不動産を売りたいという方は、ご実家の名義が認知症の親御さんであった場合は、売買契約の前に成年後見制度の利用を検討せざるを得ず、裁判所への申立手続きが必要となる可能性もあります。
司法書士の業務を網羅的かつ詳細に記載することはなかなか難しく、現実社会の様々な問題やお悩みを、個別具体的に当てはめていくことも簡単ではありませんが、本稿が皆さまの司法書士への理解の一助となれば、これほど嬉しいことはありません。
また、ご自身の抱えているお悩みの相談先が分からず迷っておられる方も、まずは司法書士に、そのお悩みを打ち明けてみてはいかがでしょうか。下記の記載に無いからと遠慮することはありません。司法書士としてお支えできることは力を尽くして問題の解決に当たりますし、業務外のことは信頼できる相応しい専門家をご紹介もできます。
「解決の第一歩は、相談という行動を起こすこと!」を大事にするひろい事務所では、皆さまの行動力を決して徒労には致しません。
司法書士の主な仕事
1. 不動産登記の手続き
家や土地の売買、相続などによって持ち主が変わると、その情報を法務局に登録(登記)しなければなりません。司法書士は、この不動産登記の手続きを代理します。
どんなときにサポートが必要?
- 家や土地を購入・売却したとき
- 相続によって不動産を受け継いだとき
- 住宅ローンを完済して、抵当権を抹消するとき
など
司法書士ができること
- 不動産の売買・相続登記の申請
- 抵当権抹消手続き
- 不動産登記に必要な書類の作成
など
行政書士との違い
行政書士は書類作成のサポートをしますが、不動産の登記申請代理・代行はできません。登記の手続きが必要な場合は司法書士が対応します。
手続きにかかる時間と費用
- 登記手続き期間:2〜3週間
- 登録免許税:不動産評価額の0.4%~2%
- 司法書士報酬:5万円〜20万円
2. 会社や法人の登記手続き
会社を設立するときには、法務局への登記が必要です。司法書士は、会社の登記をスムーズに行うための手続きをサポートします。
どんなときにサポートが必要?
- 株式会社や合同会社を設立するとき
- 会社の役員を変更するとき
- 会社の本店を移転するとき
など
司法書士ができること
- 会社設立登記の申請
- 役員変更や商号変更の手続き
- 事業目的の変更登記
など
行政書士との違い
行政書士は定款の作成や許認可申請をサポートしますが、会社の登記手続きは司法書士が行います。
手続きにかかる時間と費用
- 登記手続き期間:1〜2ヶ月
- 登録免許税:資本金の0.7%もしくは15万円のうち低額の金額(設立の場合)
- 司法書士報酬:5万円〜20万円
3. 相続登記の手続き
亡くなった人の不動産を相続する場合、登記名義を変更する手続き(相続登記)が必要です。尚、相続登記は令和6年4月1日より義務となりました。
どんなときにサポートが必要?
- 親から不動産を相続したとき
- 遺産分割が決まり、不動産の持ち主を変更するとき
など
司法書士ができること
- 相続登記の申請
- 必要書類(戸籍謄本・住民票など)の収集
- 遺産分割協議書の作成サポート
など
行政書士との違い
行政書士は相続に関する書類作成をサポートできますが、不動産の登記変更は司法書士が担当します。
手続きにかかる時間と費用
- 登記手続き期間:1〜3ヶ月
- 登録免許税:不動産評価額の0.4%
- 司法書士報酬:5万円〜20万円
4. 遺言書の作成サポート
将来の相続に備えて、遺言書を作成することでトラブルを防ぐことができます。司法書士は、遺言書の作成をサポートし、法的に有効な形に整えます。
どんなときにサポートが必要?
- 自分の財産を特定の人に確実に渡したいとき
- 相続争いを避けたいとき
など
司法書士ができること
- 公正証書遺言の作成支援
- 遺言執行者の指定
- 自筆証書遺言の法的チェック
など
行政書士との違い
行政書士も遺言書作成のサポートを行いますが、公正証書遺言の作成や相続登記まで対応できるのは司法書士です。
手続きにかかる時間と費用
- 遺言書作成期間:1〜2ヶ月
- 公証人費用:3万円〜5万円
- 司法書士報酬:5万円〜15万円
5. 成年後見制度の利用手続き
認知症や障がいなどで判断能力が低下した人の財産管理を行うための「成年後見制度」の手続きをサポートします。
どんなときにサポートが必要?
- 認知症の親の財産管理をサポートしたいとき
- 自分が将来判断能力を失ったときのために、後見人を決めておきたいとき
- 身寄りのない高齢者が財産管理を任せる人を決めたいとき
など
司法書士ができること
- 成年後見制度の申請手続き
- 任意後見契約の作成サポート
- 後見人としての業務(財産管理・契約手続き)
など
行政書士との違い
行政書士は、任意後見契約の契約書作成をサポートすることはできますが、裁判所への申立て業務を行うことはできません。司法書士は、実際に後見人として活動することも可能です。
手続きにかかる時間と費用
- 手続き期間:2〜6ヶ月(家庭裁判所の審査による)
- 司法書士報酬:10万円〜30万円(後見業務が発生する場合は別途費用)
6. 簡易裁判所での裁判代理業務
司法書士は、140万円以下の金銭トラブルについて、裁判所で代理人として訴訟を行うことができます。
どんなときにサポートが必要?
- 借金の返済を求めたいとき
- 家賃未払いのトラブルを解決したいとき
- 交通事故の損害賠償を請求したいとき
- 未払いの給料を取り戻したいとき
など
司法書士ができること
- 簡易裁判所での代理人業務
- 裁判所に提出する書類の作成
- 訴訟手続きのサポート
など
行政書士との違い
行政書士は、裁判に関する書類作成をサポートすることも代理人として訴訟に参加することもできません。司法書士は、簡易裁判所に限り、弁護士と同じように依頼者の代理人として法廷に立つことができます。
手続きにかかる時間と費用
- 訴訟手続き期間:1〜6ヶ月(裁判の進行による)
- 司法書士報酬:10万円〜20万円(案件の難易度による)
7. 借金問題の解決サポート
借金の返済が難しくなった場合、司法書士が任意整理や自己破産などの手続きをサポートします。
どんなときにサポートが必要?
- 借金の返済が苦しいとき
- 過払い金を取り戻したいとき
- 自己破産や個人再生を検討しているとき
など
司法書士ができること
- 任意整理の手続き
- 過払い金請求の手続き
- 自己破産・個人再生の申立てサポート
など
行政書士との違い
裁判所に提出する書類作成や債権者との交渉などは行政書士が対応することはできず、借金問題において行政書士が対応できることは多くありません。140万円以下の借金問題であれば、司法書士は実際に交渉を行ったり、簡易裁判所で代理人として対応できる点が異なります。
手続きにかかる時間と費用
- 手続き期間:3〜6ヶ月
- 司法書士報酬:5万円〜30万円(手続きの種類による)
8. 商業・法人の変更登記
会社の役員変更や増資などの法人に関する登記手続きをサポートします。
どんなときにサポートが必要?
- 会社の取締役を変更するとき
- 会社の資本金を増やしたいとき
- 会社の本店を移転するとき
など
司法書士ができること
- 役員変更登記の手続き
- 本店移転の登記申請
- 商号変更や事業目的変更の登記手続き
など
行政書士との違い
行政書士は、会社設立時の定款作成や許認可手続きを行いますが、会社を経営していくなかで必要となる様々な法務局への登記申請は司法書士が担当します。
手続きにかかる時間と費用
- 手続き期間:2週間〜1ヶ月
- 登録免許税:変更内容により異なる
- 司法書士報酬:5万円〜15万円
9. 供託手続きのサポート
供託とは、家賃トラブルなどの際に、お金を法務局に預けておく手続きです。
どんなときにサポートが必要?
- 貸主による家賃の増額要求により揉めているとき
- 保証金を公的に預けたいとき
など
司法書士ができること
- 供託手続きの申請
- 必要書類の作成
- 供託金の返還手続き
など
手続きにかかる時間と費用
- 手続き期間:1〜3ヶ月
- 司法書士報酬:5万円〜10万円
10. 裁判所提出書類の作成
裁判所に提出する書類は、正確で適切な形式で作成する必要があります。司法書士は、訴訟や家事事件に関する申請書類の作成をサポートします。
どんなときにサポートが必要?
- 離婚や養育費の請求をしたいとき
- 相続の調停や審判を申し立てたいとき
- 借金の整理のために自己破産を申請したいとき
- 不当な請求や未払い金に対する訴えを起こしたいとき
など
司法書士ができること
- 訴状や答弁書の作成
- 家庭裁判所への調停申立書の作成
- 破産申立書や個人再生申立書の作成
- 証拠書類の整理や申請のサポート
など
行政書士との違い
行政書士も役所へ提出する書類作成を行うことはできますが、裁判所への提出書類については、弁護士と司法書士のみが関与できます。また、司法書士は簡易裁判所の訴訟代理人になれるため、単なる書類作成にとどまらず、依頼者の立場に立って法的手続きを進めることができます。
手続きにかかる時間と費用
- 書類作成期間:1〜2週間
- 司法書士報酬:5万円〜15万円(書類の種類による)
※ここでご紹介した業務や内容は一部です。
まとめ
司法書士は、私たちの暮らしの中で発生するさまざまな法律手続きをサポートする専門家です。不動産登記や会社の設立・変更登記、相続登記などの法務局への手続きはもちろん、借金整理や裁判所提出書類の作成など、幅広い分野で活躍しています。
特に、不動産や相続に関する登記、成年後見制度の利用、裁判所での代理業務 などは、専門的な知識が必要なため、司法書士のサポートが不可欠です。また、行政書士と似た業務もありますが、登記手続きや簡易裁判所での代理業務ができるのは司法書士だけ という点が大きな違いです。
手続きが煩雑で不安を感じる場面では、司法書士に相談することで、スムーズに問題を解決できます。法的な手続きでお困りの際は、お気軽に司法書士へご相談ください。